仙台東部支部「榴岡公園」


 榴岡公園といえば西公園とならぶ仙台中心部の桜の名所である。同じ桜でも西公園がソメイヨシノに対しこちらはシダレザクラが主で、満開の頃は大勢の花見客の目を十分に楽しませてくれる。私との関わりでは、高校1年からの13年間に加え平成15年から現在に至るまでこの近所に住んでおり、併せると32年間四季を通しての移り変わりを見つめてきた。高校生の頃は、公園の大部分が一般の人は許可なしには立ち入れない東北管区警察学校敷地とその西隣に桜の木が植栽された公園の境界に旧陸軍歩兵第4連隊関連の石碑が立っている細い道があって、この小道が重いカバンを抱えながら日々通った懐かしい通学路であった。その後、昭和50年に東北管区警察学校が多賀城市に移転、翌年に仙台市がその跡地を公園用地に組み込んで順次整備を進め現在のような姿の公園となった。

 この公園の特徴は、中心部に1.5haの面積を有する芝生広場があり、その周囲にはシダレザクラのほかマツ、スギ、ツバキ、エドヒガン、ツツジなどの様々な種類の樹木と灌木が生い茂り緑豊な環境となるような工夫がされていて、利用する人々それぞれの思いに沿って自由に活動できるスペースと配慮がしっかりと用意されていることである。ジョギング、ウオーキング、キャッチボール、ボール蹴り、体操、ダンス、太極拳、植物写真撮影、楽器演奏さらにはペットの散歩などが楽しめる。また、要所要所にトイレや自動販売機が配置されいるのも気が利いている。一方で、これだけの広いフリースペースがあるので災害時の緊急避難場所としての十分な役割が果たせる機能をも持ち合わせている。

  今、榴岡公園では新たな賑わいの創出とサービス向上を図るためある「社会実験」が行われている。公園を核とした都市の魅力向上を図るのがねらいのようだ。公園の利用価値をより高めようとする試みに異論はないが、日頃よりコンクリートやアスファルトなどの人工物に囲まれ、ともすれば物質的な豊かさや便利な生活を追い求めがちな都会の生活の中にあって、たとえひと時であってもゆったりとした時の流れに浸りながら太古の昔より人と自然が一体となって共存共栄してきたことを思い起こさせてくれる貴重な空間になっているという視点も是非忘れないで欲しい。