雑記帳第35回「 日本経済の復活やいかに 」


 今年は元日から能登半島が大地震に襲われ、人的、物的に甚大な被害が発生したことは記憶に新しいところです。そういう影響もあってか、年初の株価は昨年末比約200円安の水準からスタートしましたが、その後じりじりと値を上げ、2か月後の3月4日には本邦初の4万円の大台に達しました。いよいよ曙光が見えてきたかと思えなくもありません。事実今年の「春闘」の結果を見ると、大手は軒並み満額又は要求以上の高額回答が目白押しで、ようやく賃上げ傾向が本格化の段階に入ったように思われます。昨年も結構大手の回答は好調だったのですがそれが中小企業までは波及せず、結局物価高騰の中で実質賃金は全体として低下してしまいました。なにせわが国の被用者の7割が中小企業なのですから、今年は中小企業をも巻き込んだ賃上げが実現することにより、ぜひとも経済の好循環が確かな動きとなることを期待したいものです。

 わが国でバブルが崩壊したのは1991年(平成3年)とされますが、その翌年から昨年(令和5年)まで32年間の毎年の経済成長率を平均すると、わずか0.75%にとどまっています。まさに「失われた30年」と言うにふさわしいでしょう。ほぼ同じ期間における主要国の一人当たり平均年収の推移をみると、程度の差はあれ、わが国以外はすべて増加している中で、ひとり日本だけが横ばいとなっています。その要因については諸説あり、当然私などが結論を出せるような話ではありませんが、ともかく「日本一人負け」の状態は明らかに異常と言えます。これをかつての高度成長時代のようにはいかないにしても、せめて先進諸国の平均レベルまでに高めなければなりません。被用者の収入が伸びればそれは我々の年金にも跳ね返るという直截的効果の問題だけでなく、経済が弱いままでは頻発する大災害への備えや虎視眈々とわが国を狙う近隣諸国に対する防衛面でも的確な対応ができません。場合によっては、致命的な危機に陥る可能性も否定できません。

 景気の「気」は人々の気持ち、意識の意味があります。皆が先行きに希望を持って行動すれば経済にも良い影響があることが経験則として分かっています。わが国の高齢化率は、現在ほぼ30%に達しています。この大きな潜在力を持つ我々高齢者層が率先して地域社会を元気にする取組をするならば、それは自らにとっても社会にとっても誠に意義あることと言えましょう。

会長 小林 伸一