気仙沼・南三陸支部「気仙沼の水産業の新記録」


 気仙沼は水産のまちとよく言われますが、それを物語っているのは、地元紙の1面トップに良くも悪くも水産業の情報がよく載るからでしょう。今年はこれまで3つの新記録が載りました。

 1つ目は、4月4日に水揚げされた気仙沼が全国1位の水揚量を誇るメカジキの平均価格が、これまでで最も高いキログラムあたり1,913円になったことです。私が県の水産技術職として、メカジキの販促や魚食普及に取り組んでいた20数年前は、キログラムあたり千円もしていなかったのに、今は一時的ではありますが2倍になったということです。これは、不漁の要因もありますが、業界関係者の皆さんの継続した販促の取組があったからだと思っています。

 2つ目は、マダコの豊漁です。2023年度は数量で253トン、金額で3億5,900万円と大震災以降最高の水揚げとなりました。そのため、秋から冬にかけて魚市場の沿岸コーナーはマダコ一色で、魚屋さんやスーパーでも茹でられたマダコが並んでいる光景を良く目にし、美味しく頂いた次第です。

 3つ目は、4月3日の三陸ワカメ入札会で塩蔵ボイルワカメ(芯抜)の平均価格が10キログラムあたり28,788円とこれまでの最高値になったことです。こちらの要因は、低気圧被害や高水温による養殖開始の遅れで生産量が大きく減少したからのようです。養殖ワカメの高水温対策の一つとしては、テレビで、度々放映されていますが、気仙沼水産試験場による高水温に強いワカメの作出です。これは、初夏に高水温下で生えていた天然ワカメと、生長の特に良かった養殖ワカメを掛け合わせて作った品種です。これが今期の養殖試験でもいい成果があったので、今後の高水温対策の救世主となるよう見守って行きたいですね。

 新記録は、価格や数量によって、生産者、仲買人、小売店、消費者では、一長一短ですが、何はともあれ新記録は、皆を奮起させる材料になるのではないかと思っています。

小野寺 淳一