名取・亘理支部「奥州三十三観音について」


 宮城県に18、福島県に3、岩手県に12の観音霊場があります。その他に特別に岩手県に2、福島県に1つがあります。

 その内、名取・亘理支部管内には、4つの観音堂があり、第1番札所は名取市高舘山の頂上近くの観音堂で、2間四方の御堂だが、床が壊れてしまい、今は管理している近くの紹楽寺に安置されています。等身大よりひとまわり大きい、木造の十一面観世音菩薩で、作者年代とも明らかでないが、保安4年(1123年)熊野那智神社が勧請されるまで、閖上浜から養老3年(719年)引き上げられて那智飛龍権現社として祀られていたと言われています。


 第2番札所は、紹楽寺から1.2km程北に行くと、天苗山秀麓齋に安置されている御本尊聖観世音菩薩は50cmの座像で、運慶の作と伝えられています。
 寺でありながら、齋と言う名は珍しいが、伊達政宗の書斎でもあったために名付けられたようです。伊逹家の租、尚宗、植宗、輝宗、そして伊逹家の家老高舘城主の福田駿河守の位牌が安置されており、本堂内陣の左右の欄間に10cm程の地蔵菩薩像千体物が並べられています。


 第3番札所金剛寺観音堂別名川上観音堂は、秀麓齋から南に1km位の所にあります。
御堂は、2間3.6m四面の濡れ縁がめぐらされ、四隅の丸柱が太く安定感があります。
 御本尊十一面観世音菩薩は、2m余りの木造金箔仕上げで慈覚大師の作と伝わっています。


 第5番札所の名取千手観音堂は、旧増田町本町にありましたが、平成15年に所有者の移転により、名取市役所通りに移転しています。1m4面の観音堂は、昭和7年に改築されたようです。御本尊の千手観音は厨子に納められ、高さ60cm程の立像で寄木造り漆乾仕上げの目鼻立ちの整った観音様です。
 現在の札所は、1、761年気仙沼市の三十番札所補陀寺の智膏和尚ら七人の僧達により定められたようです。

板橋 正春