
4月25日の日本経済新聞に「消費税減税論への7つの問い」という記事が掲載された。
物価高や米関税措置への対策として、「時限的な消費税減税」を求める声がある。時事通信社の4月世論調査では、減税に賛成が68.4%と反対14.0%を大きく上回った。夏の参議院議員選挙を前に、この議論は与野党を巻き込んで盛り上がることだろう。消費税減税は現実的な議論となりうるのか7つのチェックポイントを考えてみたとして、以下の7つが挙げられていた。
(1) 今はインフレである。景気刺激のための減税はインフレを加速する。困っている人を助けることが目的なら受給対象を絞った給付金の方が適切なのではないか。
(2) 今の日本経済は、需要が足りないというよりは供給不足が問題。コメが典型的で、作る人が足りなくて値段が上がっている。消費税減税という政策は、人手不足という課題に対して全く無力である。
(3) いつから税率を下げるのか。消費税率を変えるには法改正が必要であり、国会が今すぐ取り掛かったとしても年内実施は容易ではない。年末商戦に間に合わせるために10月1日から減税するとしよう。その前には必ず「買い控え」が発生する。つまり増税時の「駆け込み需要」の逆の現象が飽きてしまう。消費減税という政策には即効性を期待しにくい。
(4) 時限的な消費減税を実施する場合は「いつ戻すのか」という問いがつきまとう。「3年後に戻す」など手法はあるだろうが、「一度下げたら二度と上げられない」という事態は避けたい。
(5) 消費減税の際には、必ず増税時と同じようなコストがかかる。商店は値札を変えなければならず、会計ソフトなども更新することになる。納税する事業者の負担がある。
(6) 消費税減税によって個人消費が増えるという保証はない。コロナ禍の際の10万円の給付金さえ、ほとんどは貯蓄に回った。
(7) 確実なのは、減税によって国の財政赤字がさらに悪化することだ。日本国債の格下げリスクも無視できない。長期金利を上昇させ、企業のコストを増やすとともに住宅ローン金利などを通じて国民生活を圧迫しよう。
以上は初歩的なシミュレーションである。「減税は民意である」と唱える人たちは、せめてこの程度は考慮しておいていただきたい。神は細部に宿るのであると結んでいる。
また、この記事では触れられていないが、消費税の役4割は地方税の財源であり、全国知事会は消費税の減収が地方財政上甚大な影響を与えると指摘している。
そして参議院議員選挙である。野党はそろって消費税減税を公約に掲げた。国民は野党に軍配を上げ、与党は非改選を含め参議院全体で過半数割れとなった。今後消費税減税の議論が加速することは必須と思われるが、野党の主張は範囲や税率、期間などがそれぞれ異なっており協議が難航するとみられている。どうなる消費税減税。どうなる日本。
副会長 千葉 裕一