
【はじめに】
昨年、この紙面を借りて「(仮称)登米市地域交流センター整備計画」について紹介したが、今回はその施設整備事業を巡る登米市と登米市議会の対立について紹介したい。
遡ること9年前、平成29年4月の登米市長選挙において、築後40年以上が経過し老朽化が進む登米市迫庁舎の新築を公約に掲げて再選を目指した現職の市長とその白紙撤回を訴えて立候補した元津山町長熊谷盛廣氏が激しい選挙戦を繰り広げ、白紙撤回を訴えた熊谷盛廣氏(以下、「前市長」という。)が現職を破り初当選した。
ところが、、それから7年が経過した令和6年4月、前市長が、こともあろうに、「公約違反だ」との市民の声が上がる中、「(仮称)登米市地域交流センター整備事業(以下、「事業」という。)」について公表したのである。(前市長は、この事業を公表した時、「これは単なる新庁舎建設ではなく、公約違反ではない」と説明している。)
前市長が進めていたこの事業とは、「現在、市内3か所に分散している本庁舎機能を1か所に統合し、公民館・図書館機能等を併せ持つ複合施設」を整備しようとするもので、総事業費147億円余(合併特例債を利用するため、実質的な登米市の負担額は約47億円)、令和12年度の完成を見込んでおり、令和8年度の着工を目指し、令和7年度当初予算で3,300万円が予算化され、「基本設計及び実施設計業務」について公募型プロポーサルを実施し、最優秀提案者を決定するなど既にスタートしている事業である。
【市と市議会の対立に至るまでの経緯】
私は、令和7年4月の登米市長選挙が行われるまでは、当然、この事業は前市長により計画通り進められるものと信じて疑わなかった。
ところが、その選挙で、事業の白紙撤回を公約に掲げた新人の熊谷康信氏(以下、「市長」という。)が、事業の継続を訴えて3期目の当選を目指した前市長を破り当選した。
なんと、8年前の選挙と同様の結果がまた繰り返されたのである。
また、その市長選挙と同時に行われた市議会議員選挙において、事業の推進派が多数当選していることなどから、事業の白紙撤回か、継続か、市長の対応が注目されていた。
【市と市議会の対立】
(その1) そんな中、令和7年6月、市長は、選挙公約どおり事業の白紙撤回を表明するとともに、当初予算で計上されていた「基本計画策定費用3,300万円を削り、新たに既存庁舎の現況調査費用2,200万円を盛り込んだ補正予算案」を議会に提出した。
採決の結果、補正予算案は、反対多数で否決された。そして、これを機に事業の白紙撤回を進める登米市と事業の継続を求める市議会の対立が明らかになったのである。
(その2) 令和7年12月2日、市長は、「物価対策などの費用を含めた一般会計補正予算案」と、6月に否決された「既存庁舎現況調査」の内容を見直し、改めて「既存庁舎が改修を含めてどの程度長く利用できるかなどの調査費用2,200万円余を盛り込んだ補正予算案」を提出した。一方、これに反発した市議は、「調査費用を削除した修正案」を提出した。
そして、12月19日の採決で、双方が提出した議案がいずれも否決され、そのまま議会が閉会した。この結果、市民生活関連の補正予算も成立しないという異例の事態となり、市民生活への影響が懸念される結果となったのである。
(その3) このような異例の事態を打開するため、12月25日、市議会は特別議会を開催し、市長が提出した「物価対策などの費用を含めた一般会計補正予算案」を全会一致で可決するとともに、公共施設をどのように管理していくかを説明するための調査だとして「既存庁舎の現況調査費用約2,200万円を盛り込んだ別の補正予算案」も提出され、可決・成立した。ただ、既存庁舎の現況調査に賛成票を投じた市議の一部からは、「事業の白紙撤回に同意したわけではない」との声も上がっており、事業の白紙撤回か、継続か、決着するまではまだまだ紆余曲折が予想される。
【議会閉会後の市長のコメント】
「既存庁舎の現況調査費予算」が成立したことを受けて、市長は、「前回否決された既存庁舎の現況調査費予算が可決されたということは、私の考えが広く理解された結果だ」とした上で、「早急に既存庁舎の調査を行い、その結果を踏まえた上で、事業を中止するか、継続するか、どちらが市民にとって良いのかをしっかり考え、令和8年6月頃までに決断したい」との考えを明らかにした。
【おわりに】
既存庁舎(迫庁舎)が築後40年以上を経過していることから、仮にこの事業が見送られたとしても、近い将来、その改修工事は避けられず、多額の費用を要することに変わりはない。そして、合併特例債を利用して事業を継続するためのタイムリミットが迫っている中、「事業の白撤回とは、新庁舎を建設しないということではない」と常々口にしている市長が、最終的に、いつ、どのような決断をするのか、私はこれからも注視していきたい。
登米支部 岩渕 隆伍
