雑記帳第10回「日本人の寿命」


 このほど、日本人の昨年現在での平均寿命のデータが厚生労働省から発表されました。男性が81.25歳、女性が87.32歳と、前年比較でそれぞれ0.16歳、0.05歳伸び、過去最高を更新しています。これを世界の中で見ると、男性は香港、スイスに次いで第3位、女性は香港に次いで第2位です。いずれも僅差ですから、男性、女性とも世界トップクラスと言ってよいでしょう。まあこういったレベルの情報は大方の人が知っていることと思いますが、一体わが国はどのような経過をたどって現在の長寿大国になったのか調べてみました。

 日本国民の平均寿命に関する最も古い公的データは明治31年時点のもので、これによると男性は42.8歳、女性は44.3歳です。その後世情に応じて上昇や下降を示し、大東亜戦争の期間中は調査が行われませんでしたが、ともかく戦前は男女とも50歳を超えることはありませんでした。戦後最初の調査が昭和22年(1947年)で、男性50.06歳、女性53.96歳でした。それから昨年まで71年が経過したわけですが、これを便宜上昭和57年(1982年)を境に前半35年と後半36年に分けてみてみると、前半だけで男性は24年、女性は25年伸びているのに対し、後半で男性は7年、女性は8年の伸びにとどまっています(いずれも小数点以下四捨五入)。つまり、戦後短期間で大幅な伸びを示し、近年は微増傾向が続いているという状況です。因みに、平成23年は東日本大震災の影響でしょうが、男女とも落ち込んでいます。
 
 さて、わが国がこのように急速に長寿国になった背景には、医学の進歩や食糧事情の改善が与っていることは確かでしょうが、併せて、世界に冠たる健康保険制度の普及があることはやはり特筆されるべきと思います。その意味では適切な制度の設計、運用、改善を進めてきた先人の識見と努力に大いに感謝したいと思います。その一方で、こうした状況のもとでの問題点として、健康寿命の伸び方があります。WHOの最新データによると、2000年から2016年の間の各国の健康寿命の伸びを見ますと、高い方から韓国4.91年、シンガポール4.88年、アイルランド4.28年といった中で、わが国は2.28年にとどまっています。もともと2000年時点でのわが国の健康寿命(男女)が72.54歳とダントツの1位でしたから伸びしろが少ないとは言えますが、もう少し伸びても良いようには感じます。各支部の総会等に出席させていただいた折に必ずお話しておりますが、高齢者が健康で長生きするための秘訣として仕事(社会活動)、趣味、交流の三つがあると言われる中で、当クラブと致しましては主として「交流」の分野で的確な役割を果たせるように努力をして参りたいと考えておりますので、引き続き皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。

会長 小林 伸一 記