雑記帳第12回「令和元年を振り返って」


 本年5月1日、年号が「令和」と改められました。わが国で初めて、自国の古典に元号の根拠を置く改元でした。30年以上も平成という年号を使ってきたわけですから、最初のうちはなんとなく違和感がありましたが、だんだん使い慣れるに従い、むしろすっきりした良い年号と思えるようになってきました。ご即位に伴う皇室関係の行事も、11月22日の伊勢神宮外宮から12月4日の皇居・宮中三殿に至る各所での「親謁の儀」を終えたことにより一区切りとなりました。一連の儀式・行事がなんらの事件事故にも見舞われず、恙無く挙行されたことを心からお喜び申し上げる次第です。
 さて、ご承知の方も多いと思いますが、「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」が11月9日に皇居前広場で開催されました。たまたま友人に誘われ、自分が生きているうちにこういう機会を得ることはもうないだろうと思い、一緒に行くことにしました。本当に抜けるような青空のもと、大型の貸切りバスで出発し、東京駅の間近で降りてから人また人の波の中をゆっくりと歩いて会場に到着しました。東京とはいえ、11月の午後5時を過ぎるとさすがに寒さが募る中、祭典が始まりました。詳細は割愛しますが、両陛下と広場を埋め尽くした人々との心が本当に一つになったように感じられる祭典で、こうした歴史的場面に立ち会うことができて誠に幸せでした。翌日のパレードは時間の関係で残念ながら見られませんでしたが、前日同様の素晴らしい日本晴れでした。
 ある日の天気がどうなるかは全く人間が関与し得ない自然現象であるにもかかわらず、この国民祭典やパレード当日の一点の曇りもない秋晴れ、さらには、10月22日の「即位礼正殿の儀」当日における式典の時間帯だけ雨が上がり虹が出たという現象を考え合わせると、なにかしら皇室の摩訶不思議な「力」を感じるのは、私一人だけではないだろうと思います。
 こうした慶事の一方で、今年も次から次へと風水害に見舞われた年でした。近年、自然災害の頻度と程度が年を追うごとに深刻さを増しており、これまでの想定を超えたレベルの災害に対しては、もはや既存のインフラでは対応が難しくなっていると言わざるを得ません。これら自然災害の激甚化の原因が海水温の上昇にあることは確かなようですが、その背景が温室効果ガスの排出なのかどうかは実のところ定かではありません。ともかく防災・減災対策としてのインフラ整備に行政は万全を期さなければなりません。その他にデフレ経済脱却の問題、対外的安全保障の問題、そして我々勾当台クラブに最もかかわりの深い高齢化の問題等々課題山積のまま新たな年を迎えるわけですが、人生百年時代であり、また人口減少社会でもある今の日本で、我々高齢者は「健康に生きる」ことにもっともっと意を用いるべきではないかと思うのです。

会長 小林 伸一 記