仙南支部「県南の桜ものがたり」


「桜咲く国」に“ズキズキ、ワクワク”する季節がまたやってきました。宮城県内の桜は昨年よりは遅く満開を迎えましたが、今年も美しく咲き、地域の方々だけでなく、国内外から訪れた多くの観光客を魅了しました。

 さて、県南の河川の流域には、阿武隈川左岸の柴田町から岩沼市にかけての桜、同右岸の角田市の角田橋上下流の桜と支川高倉川左岸の桜、丸森町の新川左岸の桜や、白石川には上流から七ヶ宿町の七ヶ宿ダム公園の桜、白石市の蔵本堰堤から下流白石大橋間の桜と白石城址益岡公園の桜、大河原町から柴田町にかけての「白石川堤一目千本桜」と船岡城址公園の桜、蔵王町遠刈田温泉の松川の桜、川崎町の名取川の支川碁石川には釜房ダム国営みちのく湖畔公園の桜など、県内のお花見スポット人気ランキングに入っているものも含め、見どころが一杯です。

 よく「土手の桜」と言いますが、河川に桜は付き物です。例えば、「白石川堤一目千本桜」は、明治43年(1910)と大正2年(1913)の水害を契機に白石川改修工事によって同12年(1923)に堤防が完成したことから、大河原町出身の高山開治郎氏が「故郷への思いを桜に託して」贈られ、大河原町から柴田町の白石川沿い約8㎞に亘って植えられた「染井吉野」の桜並木です。これまで地域の方々に育てられ今年で101年目を迎えました。大河原振興事務所の「みやぎ蔵王三十六景」には「白石川の韮神堰と一目千本桜」がありますが、今年も蔵王連峰の残雪を背景に美しい姿を見せてくれました。

 また、戦後、昭和22年(1947)カスリン台風や翌年のアイオン台風を契機に白石川の本格的な改修が進められ、平成の時代に大河原大橋上流に完成した右岸堤防には「染井吉野」に加え、今年新たな桜「大河原紅桜」も植樹されました。4月14日の河北新報の記事によれば、大河原町独自の新品種「おおがわら千年桜」が公益財団法人「日本さくらの会」の認定を得たとのことです。このように、県南の桜は、河川流域の治水の歴史を通して地域の思いを紡いできましたが、千年先へとこれからも地域の宝として私たちを楽しませてくれることを願っています。

橋本 潔