雑記帳第28回「 乗り鉄の夢 」


 鉄道の通っていない田舎で育ったせいか、電車(昔は汽車と言った)へのあこがれが人一倍強い。
ただ乗っているだけでいい。いわゆる乗り鉄である。目標は全国の鉄道全路線乗車であるが50年たってもいまだ完遂していない。

 青春18切符等を使ってローカル線に乗って旅をするが、格安切符であるために普通列車にしか乗車できない。近年は都市近郊のローカル線を除けば運行本数が極端に少ない区間もあり一度下車すると時間帯によっては次の列車が来るまでに3時間程度待たされることもある。
 過疎地域では通学や高齢者の通院手段として使われることが多く、朝夕以外の時刻表は運行間隔が長く不便なことこの上ないがその地域で生活している人の乗車時間に合わせて運行しているのだろうから乗り鉄が不満を言ってもしょうがない。

 これまで乗車した路線の中で1日に1往復しか運行していない区間があった。北海道の札沼線(さっしょうせん)浦臼駅から新十津川駅間である。この路線はもともと札幌と留萌本線の石狩沼田を結んでいたことから「札沼線」と呼ばれていたが、新十津川~石狩沼田間は昭和47年に廃止されている。乗車した令和2年1月当時は札幌と新十津川間78.1㎞のうち札幌~浦臼までが1日6往復、浦臼~新十津川間が1往復となっていた。北海道医療大学駅から北の区間は同年5月の廃線が決まっており廃線前に駆け込み乗車をした。
 浦臼駅9時6分発の新十津川駅行きが始発イコール最終電車となり、折り返しの電車が新十津駅10時発の始発かつ終電となっていた。どのような人が乗っているのであろうかと関心があったが、地元の人はほとんど乗っておらず廃線前に乗車実績を作りたい撮り鉄や乗り鉄だけであった。

 JR東日本は昨年7月にローカル線の収支を公表し、赤字路線の存廃について、今後沿線自治体と協議することを発表した。全国的にも乗車人員の減少によって営業係数の悪い赤字ローカル線は廃線、バス輸送への転換などが検討されている。県内でも陸羽東線鳴子駅以西の扱いが検討俎上にのぼっているようである。少子化による児童生徒数の減少、自家用車の普及で鉄道の利用者が減っているが、高校生の通学や高齢者の通院などに使っている交通弱者と言われる人々の足をどう確保するのかが問われる。

 ようやく時間がとれるようになった時期に新型コロナの拡大で緊急事態宣言の発令や宣言解除後も三密回避や県をまたぐ不要不急の移動自粛などが要請されたことで、ここ3年ほど乗り鉄は休業状態である。

 政府は、新型コロナ感染症を、今年の5月8日に感染症法上の分類を2類相当から5類に移行するとの方針を固めたとの報道があった。分類が変わっても感染症であることに変わりないので感染対策を怠るわけにはいかないが、今後は気兼ねしないで出かけることができる。廃線前に未乗車路線・区間の乗り鉄を再開しよう。金はないが暇だけは十分にある。

副会長 千葉 裕一 記