雑記帳第50回「80年周期説で今を考える」


 社会が大きく様変わりする契機となる出来事は、概ね80周期で発生するという見方があります。いわば社会変動80年周期説とでもいうべき経験則です。80年といっても勿論ピッタリ80年というわけではなく、前後10年程度の幅はあります。このことをわが国の近代の歩みで見てみると、まず、1853年のペリー来航で始まった幕末の政情の混乱が、1868年の明治維新の成立により討幕派の勝利で決着しました。その次は昭和に入り、1937年に始まった日支事変がその途中の1941年から大東亜戦争に拡大し、結局明治維新の77年後の1945年に米英等の連合国側のポツダム宣言をわが国が受諾し、終戦となりました。その終戦から80年目が2025年、まさにいま我々が生きている時代です。


 80年ごとの大事件という具体例を世界史レベルで探せば、例えば1789年のフランス革命の81年後の独仏戦争の勃発とか1917年のロシア革命の74年後のソ連邦の瓦解など、数え上げればきりがありません。これら「80年」をわが国と他国とのかかわりという観点に広げてそれぞれの経緯を見てみるのも面白いのですが、煩瑣を避けるため、ここでは現状において最もわが国と繋がりの深い米国との関係に絞って見てみたいと思います。


 上に記したように、1853年のペリー来航が契機となってわが国の政治情勢が流動化し、幕府の崩壊に至ったのですが、これは、米国の意図とは無関係の偶然の結果だったと解してよいでしょう。しかし、幕府崩壊から77年後の日米戦争の終幕は、双方が国益のために死力を尽くして戦った結果に他なりません。その現実の上に立って、経済面ではブレトンウッズ体制と称される世界規模の自由貿易体制が構築され、安全保障面では米国をはじめとする旧連合国が中心となって他の国に睨みを利かせる国際連合ができました。


 さて、こうして戦後80年に亘ってわが国が安住してきた「戦後レジーム」が、今まさに音を立てて崩れつつあります。端的な例を挙げれば、昨年4月にトランプ大統領が突如発表した全世界を対象にした超高関税の導入、また、本年1月に発表した国連機関を含む66の国際組織・条約からの脱退、加えてNATO(北大西洋条約機構)からの離脱にも度々言及しています。これらの枠組みの殆どはこれまで米国が中心となって構築し、維持してきたものであって、それを今米国自らが壊す側に回っていることは誠に驚愕すべき事態です。この動きの米国の真意は必ずしも明らかではありません。しかし、どんな組織でも理念でも、80年も経てばおのずから劣化し、世の実情にそぐわなくなるものです。それをトランプ大統領が先読みし、率先して解体に努めているのなら、その慧眼に敬意を表したいと思います。問題は、この局面でわが国はどうすべきか、です。勿論わが国は自らの国益を守るためには、米国のなすがままというわけにはいきません。ですが、いま米国はある意味わが国にとっての様々な軛を壊してくれているとも言えます。いわば千載一遇の機会なのです。時まさに高市政権が驚異的なスピードでわが国を変えつつあります。この先にわが国が真の主権国家となる道が開けるかどうか、政治家、そして何よりも国民の知恵と覚悟が試されています。

会長 小林 伸一